太陽光発電と税金(3)

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こんにちは
サクセス会計 税理士の樋山博一です。

今回は、太陽光発電設備と税金シリーズ第3弾『環境関連投資促進税制』について紹介します
この税制上の特典は、法人・個人事業主ともに、前回紹介した「青色申告者」についてのみ認められています

この税制は、会計上の『減価償却制度』がその前提にありますので、まずその説明からしたいと思います

例えば、事業用の建物や車両、機械などは、価額も高額であり、何年にも渡ってその資産を使用します。このような資産を会計上「固定資産」と呼びます。税金計算上は、『取得価額が10万円以上で、かつその使用の効果が1年を超えるもの』を指します。

固定資産を取得した場合、その取得した金額を、一括で経費処理するのではなく、その資産の効果が及ぶ期間に分割して経費処理します(青色申告者の場合、年間合計300万円まで、単価30万円未満の資産は一括で経費処理できます)。これを『減価償却』と呼びます。

では、何年に分割して経費処理するか

会計上の原則は、資産ごとに個別に耐用年数を見積り、その年数に分割して経費処理することになるのですが、実務上は、個別に見積ることが難しく、税務署との「見解の相違」が増えることになるなどの理由から、税務署が資産ごとに定める「法定耐用年数」を使用します。

太陽光発電設備は、法定耐用年数『17年』ですので、17年に分割して経費処理することになります

さて、今回の本題『環境関連投資促進税制』に戻りますが、この税制は、一定の太陽光発電設備を設置し、事業の用に供した青色申告者については、上記の通常の減価償却に加え、『取得価額の30%相当額の特別償却』か、『取得価額の7%相当額の税額控除』を選択適用できるというものです

要件などを簡単にまとめると、以下のようになります

【対象となる太陽光発電設備】
電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法第3条第2項に規定する認定発電設備に該当するものに限られ、その出力が10キロワット以上のもの。

【制度の概要】
(1)取得価額の30%相当額の特別償却
(2)取得価額の7%相当額の税額控除(その年度の法人税または所得税の20%が限度)

※(1)(2)のいずれかを選択適用します。
※(2)の7%相当額が、その年度の税額の20%を超える場合、差額を翌年度に繰り越して控除可能です。

【適用期間】
平成30年3月31日までに太陽光発電装置を設置し、1年以内に事業の用に供すること。

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タワーマンションの課税が変わる!?

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こんにちは(^-^)
サクセス会計 税理士の樋山博一です。

今回は、先日明らかになった「タワーマンションの固定資産税の改正」について、タワーマンション節税、通称『タワマン節税』の観点から、そのカラクリを説明したいと思います。

まず、この『タワマン節税』は、固定資産税ではなく、相続税の節税スキームです。タワーマンションなどの高層マンションは、高層階の部屋になればなるほど、市場価格は高くなります。都心の一等地では、「億ション」と言われるような、何憶もする物件が多数あります。

さて、この「億ション」の部屋を所有していた方がお亡くなりになった場合、そのマンションはいくらの価値として相続税が計算されるのかという問題になります。

相続税法上、相続財産は原則、相続で取得した際の『時価』を基準に課税されることになっています。その『時価』を算定する方法が、「財産評価基本通達」という通達に定められています。この通達には、マンションの価額は、区分所有建物と敷地権に分けて、以下のように評価すると定められています。

〇建物部分 マンション全体の固定資産税評価額 × 専有面積割合
〇敷地権部分 マンションの敷地全体の価額 × 敷地権割合

この方法で評価しますと、市場価格に影響を及ぼす階層等の要素は全く考慮されず、部屋数の多いマンションの場合には、専有面積割合や敷地権割合が低くなり、結果として、市場価格よりもかなり低い評価額となります。 国税庁の調査では、市場価格と相続税評価額のかい離が、平均3倍になるそうです。

つまり、1億円のマンションが、3,000万円ちょっとの評価額になるわけです!!

このようなスキームが横行しているため、国税庁は従来より、行き過ぎた看過しがたいタワマン節税を行っている場合には、財産評価基本通達6項「財産評価基本通達によって評価することが著しく不適当と認められる財産の価額は、国税庁長官の指示を受けて評価する」を適用するという見解でした。

つまり、投資目的で何室も何棟も所有しているような、行き過ぎた節税の場合には、税務署から否認されるおそれもあるわけです。

このような状況の中、ついに、来年度の税制改正で「タワーマンションの固定資産税の改正」を行い、高層階へ行けば行くほど、固定資産税評価額が上がる(結果的に相続税の評価額も上がる)制度に変更しようとしているようです。

今後もこの動きから目が離せません(+o+)

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太陽光発電と税金(2)

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こんにちは
サクセス会計 税理士の樋山博一です。

今回は前回の続きで、太陽光発電と税金第二弾、税制上の優遇策について紹介したいと思います。
まず、前回のおさらいです

【法人】
売電収入の金額は、通常『雑収入』として会社の収益に計上。法人税等の課税対象。

【個人】
〇自宅に設置
『雑所得』になる。
損益通算(赤字部分を、給与や年金などの他の黒字所得と相殺して通算)不可
ただし、年間の売電による所得(収入―経費)が20万円以下で、それ以外の収入が給与と年金のみの場合、申告不要。
〇貸付不動産に設置
『不動産所得』になる。損益通算『可能』
〇事業目的として設置
小規模な場合は『雑所得』で損益通算不可
出力50KW以上など一定の場合『事業所得』で損益通算『可能』

今回は、法人か?個人か?という区分ではなく、『青色申告』か?『白色申告』か?という区分で考えます。

青色申告所得がたくさん出て、顔が真っ青になる申告ではなく、法人個人を問わず、一定水準の記帳をし、その記帳に基づいて正しく行われる申告を意味し、税務署に承認申請書を提出することにより、様々な特典を受けられる制度です

一定水準の記帳とは、一般的に複式簿記を用いた会計帳簿の備付けを意味しており、会計事務所や税理士に委託している場合は、必ずこの条件は満たします。

ただし、これもまた、個人所得税の『雑所得』には、青色申告がありません
ここは注意してください

では、青色申告の特典の中身ですが、下記のようになっています。

≪個人所得税≫
〇青色申告特別控除
所得から10万円あるいは65万円の控除があります。65万円の控除を適用する場合、確定申告書に「貸借対照表」を添付する必要がります。ただし、不動産所得の場合、貸付不動産が『5棟以上または10室以上』ないと、65万円控除は適用できません
〇青色専従者給与
通常は認められない、同一生計の親族への給与の支払いが、一定の届出書の提出で可能になります
〇損失の繰越しと繰戻し
損益通算適用後にまだ赤字になる場合、その損失を次年度以降3年間繰越して、次年度以降の黒字所得と通算できます。あるいは、その損失を前年度(1年だけ)の黒字所得と通算して、前年の所得税の還付を受けることもできます

≪法人税≫
〇青色欠損金の繰越控除と繰戻し還付
その事業年度で生じた欠損金(赤字所得)は、次年度以降9年間繰越して、次年度以降の黒字所得と通算できます。あるいは、その損失を前年度(1年だけ)の黒字所得と通算して、前年度の法人税の還付を受けることができます

これ以外にも、個人法人を問わず、売電設備の取得に関係する大事な特典が、青色申告にだけ認められています。これについては、次回詳しくご紹介します

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太陽光発電と税金(1)

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こんにちは
サクセス会計 税理士の樋山博一です。

一般家庭での電力自由化開始から半年が経過し、個人法人を問わず、太陽光設備による売電が話題になっています。弊社のお客様も数件、導入しておられます

では、太陽光設備の売電収入に対し、どういう税金が課税されるか、また、どういう税制上の優遇策や節税策があるかを、今回から3回に分けて紹介したいと思います。

一回目は、どういう税金が課税されるのかについてですが、法人と個人の場合に分けて考えます。

まず、法人として売電事業を行う場合、つまり、法人名義の土地や建物に、売電設備を設置して事業を行う場合は、売電の収入金額が、その法人の収入として認識され、売電事業が主たる事業である法人の場合には「売上」、それ以外の法人の場合には「雑収入」として処理することになります。要するに、法人の利益になり、それに対して法人税や住民税、事業税が課税されるわけです。

次に個人の場合ですが、こちらの方が区分は複雑です。個人の場合、売電設備の「規模」によって、課税方法が異なります
大きく分けると、以下の3つに区分されます

(1)自宅の屋根に設置する場合
発電した電力を自家使用し、余剰電力を売却する場合です。この場合は、所得税法上『雑所得』になります。

(2)賃貸不動産に設置する場合
すでに貸付けしている不動産がある場合や、これから貸付けを予定している不動産に設置する場合です。この場合は、所得税法上『不動産所得』になります。

(3)事業として行っている場合
上記(1)(2)以外の場合がこれにあたります。しかし、「事業として」が、具体的にどういう場合を指すのかが問題になります。これについては、目安として以下の点を考慮して考えます。

〇出力50KW以上の設備
〇出力50KW未満の場合で、設備の周囲にフェンス等をしている場合、設備の周囲の除草や除雪等の維持管理をしている場合、賃借した土地や建物に設備を設置した場合

上記の場合は、事業規模で行っている売電事業として、所得税法上『事業所得』になり、それ以外は、やはり『雑所得』になります。

さて、なぜ『事業所得』か『雑所得』かが問題になるかですが、『事業所得』にしか認められていない特典がたくさんあるからです

詳細は、次回詳しく紹介しますが、一番大きな違いは、『雑所得』は損益通算ができないという点です
損益通算何じゃそらって感じですね

例えば、給料収入がある方が売電事業行い、初年度は設備投資が嵩み、売電事業が赤字だった場合、『事業所得』であれば、その赤字が給料の収入と通算され、結果的に、給与から源泉されている所得税が還付されるのですしかし、『雑所得』の場合は、そんな特典はありません

逆に『雑所得』の場合、給与や年金以外に収入がなく、売電収入から経費を引いた差額(所得)が20万円以下の場合、確定申告の必要はりません

次回は、事業所得の特典や節税策について紹介したいと思います。

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贈与税の特例その(5)

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こんにちは
サクセス会計 税理士の樋山博一です。

今回は、昨年平成27年度税制改正で創設された『結婚資金等の一括贈与の非課税制度の特例』について紹介します。

これは、父母や祖父母などの直系尊属から、「結婚・出産・育児資金を一括で贈与」された場合、最高1,000万円まで贈与税が非課税になるという制度です。

手続きや流れは、以前このブログで紹介した「教育資金の一括贈与の非課税特例」(『贈与税の特例その(3)』https://success-a.com/blog/tax-system/124/をご参照下さい)同様です。

金融機関に子や孫名義の拠出口座を開設し、その金融機関を経由して、税務署に「非課税申告書」を提出することにより、贈与税が非課税になり、領収証などの支払った証明になる書類を、その金融機関に提出して、資金の払出しを受けます。

しかし、教育資金の一括贈与と異なる点、そして一番の注意点があります

子や孫の口座に資金を移して贈与した後、贈与した父母や祖父母が亡くなった場合、口座に残っているまだ使っていない残金は、亡くなった方の財産となり、相続税の対象になります

教育資金の一括贈与の場合は、贈与された時点で、子や孫のものになり、相続税が課されることはありません

これは要注意ですね~
教育資金の一括贈与制度と違い、この結婚資金等の一括贈与制度は『相続税対策』にはならないということです

【その他の要件】
〇贈与を受ける子や孫の年齢  20歳以上50歳未満
〇贈与の期間 平成27年4月1日~平成31年3月31日
〇贈与の目的 結婚資金・子育て資金
(例)挙式費用、新居の住居費、引越費用、不妊治療費、出産費用、産後ケア費用、子供の医療費、子供の保育費
〇非課税限度額 贈与を受ける子や孫一人につき 1,000万円(結婚関係費用は300万円まで
〇口座の契約終了事由 贈与を受ける子や孫が50歳に達した場合
〇契約終了時の残額 使い残しがあれば、その残金に贈与税が課税

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